私たちを取り巻く環境

気候変動問題への対応は、単なる理念や遠い将来の話ではなく、今すぐに検討し実行すべき重要な経営課題になっています

気候変動

異常気象にともなう自然災害の増加の背景に地球温暖化がありますが、気候変動は拡大し、加速し、深刻化しています

脱炭素

気候変動を抑えるため、世界各国が温室効果ガスの排出を大幅かつ持続的に削減する目標を掲げています

再生可能エネルギー

省エネに加え、温室効果ガスを排出しない再エネの利用拡大が、これからの大きな方針となっています

企業行動

持続可能な企業活動が求められる中で、再生可能エネルギー利用を含めた環境対応が避けられません

地球温暖化の原因は人為的な要因

1988年、「21世紀前半にはかつてなかった規模で地球の平均気温の上昇が起こりうる」との有識者の意見をきっかけに、国連の組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が誕生し、地球温暖化についての研究が始まりました。

すでに温室効果ガスの影響で海水温は上昇し、氷河や海氷は溶け、海面水位も上昇をはじめています。その結果、気候変動による豪雨や熱波、大規模な水害や山火事などが各地で発生しています。

18世紀に始まった産業革命後、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の使用に伴い、大気中の二酸化炭素濃度が急増しました。

気候変動は気象(天気・気温・風・降水量など)の変化によって生じ、気象の変化は、火山の噴火や太陽活動の変化などの「自然の要因」と温室効果ガスの排出や森林破壊などの「人為的な要因」に分けられます。

IPCCは、地球温暖化の原因は人為的な要因であると断定しました。

脱炭素は世界のコンセンサスに

大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標として1992年に国連で「気候変動枠組条約(UNFCCC)」が採択され、1994年に発効しました。
これに基づいて、条約の最高意思決定機関と位置づけられる「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が、ほぼ毎年開かれています。

COPの歴史上、「京都議定書」と「パリ協定」が大きな節目となりました。

資源を有効利用する循環型社会「ゼロエミッション」やCO2の排出量と吸収量を相殺してゼロとする「カーボンニュートラル」含め、「CO2実質ゼロ」が脱炭素社会の姿になります。

COP26時点(2021年11月)では、150ヶ国以上(G20の全ての国)が年限付きの脱炭素目標を掲げています。(先進国の多くが2050年、中国、ロシア、サウジが2060年、インドが2070年の達成を表明)

既に脱炭素は世界のコンセンサスになっています。

COP26までの流れ

1995年、第1回目のCOP1がベルリンで開催。
地球温暖化対策は各国の利害が対立するため、国際社会が一体となる障害になっています。

1997年、COP3で採択された「京都議定書」は、先進国だけを削減義務の対象としながらも、温室効果ガス排出量の数値目標を初めて定めた、画期的なものでした。

2015年、COP21で採択された「パリ協定」は、先進国だけでなく、「気候変動枠組条約の加盟国すべてが温室効果ガス削減の行動をすべきである」と定め、地球温暖化や気候変動の対策における歴史的な転換点となりました。
対策方針が低炭素社会から脱炭素社会へと変わりました。

2021年8月、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した第6次報告書において、「温暖化の原因は人間活動が原因であることは疑いの余地が無い」と人為的な要因として初めて断定しました。世界の平均気温は、産業革命以前(1850年~1900年)と比べて1.09度上昇しており、このうちのほとんどが人間活動によるものとしています。

2021年11月、COP26で採択した「グラスゴー気候合意」では、「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する」と宣言し、世界の目標は「2度」から「1.5度」に強化されました。
また、石炭火力発電の段階的削減や、化石燃料補助金の廃止も初めて明記されました。

日本の脱炭素方針

2020年10月、菅首相が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」を宣言。

2021年4月、気候変動サミットでは、「2030年度に26%減(2013年度比)」としていたこれまでの削減目標が、46%減と大幅に引き上げられました。

また、民間企業の大胆なイノベーションをうながし、新しい時代に向けた挑戦を応援するために「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されています。これは、温暖化への対応を“経済成長の制約やコスト”ではなく、“成長の機会”ととらえる考えになります。

再生可能エネルギー導入の意義

日本のエネルギー産業は、石油や石炭、液化天然ガス(LNG)などCO2排出量の多い化石燃料が85%以上を占めています。

全ての電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うことは困難と考えることが現実的であり、2050年には発電量の約50~60%を再エネで賄うことが参考値とされています。

太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源とされます。

再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、まず世界に比べて高い再生可能エネルギーの発電コストを低減させていく必要があります。

脱炭素化の義務は企業に

パリ協定(2020年以降の枠組み)に国の削減義務はありません。
ターゲットは企業であり、困るのは企業。
ビジネスを続けられなくなることで、気候変動のルールが変わりました。

炭素から投資が逃げる一方で脱炭素へ投資が向かっています。
運用資産総額28兆ドル(3080兆円)となる319の機関投資家が、G7首脳に気候アクション強化を求める共同声明(2018/6)を発表しました。

オランダの地方裁判所が石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルへの訴えを認めた判決(2021/5)は、企業に数値目標を示してCO2削減(45%削減)を命じたことに加え、気候変動を人権問題として削減義務を認めたことから世界に衝撃を与えました。

GHGプロトコル(世界共通の温室効果ガスの排出量を算定する方法)に基づいて、自らの温室効果ガス排出量を算出すことが、脱炭素組織を作るうえで最も大切な、第一ステップとなります。
将来、未対応の企業については、相応のペナルティーを払うことになります。

環境を重視する価値観が浸透

大気汚染、海洋汚染、廃棄物などに対する環境意識は高まっていますが、中でも地球温暖化への関心が最も高くなっています。

内閣府が公表した世論調査(2021年3月)では、地球環境問題への関心が極めて高く表れ、脱炭素への取組を行いたいとの回答が、どの世代でも9割を超えています。

日常生活の中で、自分が環境に悪いことをしてしまったという罪悪感を感じるような自己意識を表すものとして、英語圏では「エコギルト(Eco-Guilt)」という言葉も生まれています。
これは、過度に高まった環境意識によるものと言えます。

隠れていたコスト

二酸化炭素CO2の排出は、社会的コストと捉えられ、これまで隠れていた経済的コストとして表面化します。

排出するCO2を「コスト」とみなして独自に価格を付け、設備投資の判断に役立てる「インターナル・カーボンプライシング」(ICP)の導入企業が増えています。
日立製作所は2019年に導入し、CO2の価格を1トンあたり5千円に設定していましたが、2021年8月に1万4千円に引き上げました。

カーボンプライシングは、CO2排出に対して価格付けし、市場メカニズムを通じて排出を抑制する仕組みとなります。
世界の代表的な排出量取引市場である欧州では、足元80ユーロ/t(約1万円/t)を超えています。

宇部興産は、統合報告書で「2020年度GHG排出量は1,127万t」と公表しています。これは、価格1万円/tとすれば1,127億円のコストであり、営業利益の4倍以上もの水準になります。

まともな脱炭素の考え方に

脱炭素の考え方自体は、25年前の国際条約である京都議定書(COP3、1997年)から始まっています。
これまでにも反対する意見として、温暖化危機説はフェイクである、政治的対立や取引の道具に使われている、実現不可能な無責任な主張などいくつも存在しました。
しかし、「CO2排出を減らさなければいけない」という点においては、今後覆されることはなさそうです。この前提に対して、どう削減していくのか、どういう制度を導入すべきかという点で議論が続くと思われます。
これは、「何がまともな脱炭素につながるのか」という考え方自体が進化していく過程にあるということです。

以前は、風力発電所の製造過程で多くのCO2を排出しているとか、電気自動車を充電するのに石炭火力も使われているなどの批判もありましたが、これはカウントするCO2の範囲を拡大させることで解決しています。
従来、当事者みずからが排出しているCO2の「直接排出」(SCOPE1)のみをカウント対象としていましたが、導入している電力がそもそも脱炭素なのかという考えから「エネルギー起源の間接排出」(SCOPE2)が導入されました。
さらに、製造委託先や排気靴の処理委託など上流や下流にまで拡大させた「その他間接排出」(SCOPE3)までをも考慮すべきという方向に進んでいます。

「大規模な燃料輸入を伴うバイオマス発電は中止すべき」とする環境NGOの共同宣言がなされています。(2020/12/3)
バイオマス発電は「環境にやさしい」として、電気料金に上乗せされる賦課金を使い促進されている一方で、木質ペレットやPKS(パームヤシ殻)などの燃料輸入が急増しています。
輸入燃料を前提とした大型バイオマス発電所は、生物多様性や気候の危機をさらに加速させるため、中止すべきだとする考えが表明されました。

脱炭素への取組として、「その手法がさらに拡大したときに、果たして良い社会になっているか」どうかの視点が重要であると考えます。
脱炭素が実現出来て、その仕組みに持続性があり、経済性があり、多くの民間企業が取り組めるようなビジネスこそが、真の脱炭素ビジネスであると言えます。
技術的な工夫により実現された、小さな範囲の真の脱炭素ビジネスが、数多く誕生することが望まれます。